
厄除祭・御田祭の日にだけ授与される「天野宮生土宝印」。
これは「牛玉(ごおう)宝印」と呼ばれる護符の一種になります。
「牛玉宝印」とは、中世の初め頃から各地の社寺で授与された護符のことです。
「牛玉」とは、漢方で万病に効くとされる希少な牛黄(牛の胆石)を指すとも、
疫病除けの神である神仏習合の牛頭天王をあらわすとも言われています。
極めて強い霊力を持つ護符とされ、病気平癒や盗難除け、火災除けから農耕儀礼など、様々な祈願で用いられました。
特に熊野三山のものが有名で、鎌倉時代から神仏に誓いを立てる際に、
熊野の牛玉宝印の裏面を使って起請文を書くことが行われるようになります。
強い霊力を持つ護符ゆえに、誓いを破れば大きな神罰を受ける、というわけです。
かの豊臣秀吉が、秀頼を託す五大老に書かせたのも、この熊野の起請文でした。
さて、当社の宝印には、通常「牛玉」あるいは「牛王」と書かれる部分に「生土」とあります。
これは、「牛王」の王の字の上の横棒を、牛の下につけて「生土」と変形させたと考えられています。
この「生土」は「うぶすな」と読めます。「うぶすな」とは「産土」とも書かれますが、
その人が産まれた土地、その土地の守り神を指します。
おそらく、護符の霊威を高めるために、あえて文字を組み換えたのではないでしょうか。
現在の版木は明治時代のものですが、いつ頃から「生土」の文字が使われているのかは、はっきりしていません。
この「生土宝印」のかたちは、かなり珍しいものと言われています。
かつて高野山麓一帯では、籾蒔きの日に福杖と呼ばれる木の棒に「天野宮生土宝印」を挟んで、
苗代の水口に立てて豊作を祈りました。
今でも農耕儀礼に使われる方はいらっしゃいますが、除災招福の護符として受けられる方が多くなっています。
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